10.302017
実践ブラッシュアップ講座「プロトコール」を開講しました
10月21日(土)実践ブラッシュアップ講座「プロトコール」を開講いたしました。講師は当協会理事で、元外務省儀典企画官の寺西千代子先生です。
講義では、プロトコールの概論説明に入る前に、『ミニマム10の思考法の勧め』という考え方が披露されました。これは、様々な物事の問題点について、項目毎に最優先の問題を10ずつ取りまとめて解決していくノウハウです。寺西先生ご自身が海外の友人とのコミュニケーションで行き違いがあった実体験を紹介され、受講生の皆さまも、なるほど…という表情でお聞きになってしました。とかく細かいところに目がいきがちな日本人にはこうした視点を意識して持つことが必要でしょう。
プロトコールは「国際儀礼」または「外交儀礼」と定義されますが、似たように使われることの多い「エチケット」とは、共通点もあり、一方で違う点もあります。相手を尊重することや、時代や環境により変わりうる点は共通していますが、社会生活における個人のマナーと国際社会での公的なルールでは相反する点があります。また、社会常識と儀礼上の規則とでも違う点があります。
寺西先生は外務省にお勤めの時に、2度イタリア(2回目はバチカン市国)に赴任していらっしゃいます。ご自身の体験として、最初の赴任ではイタリアではイタリア語を勉強しても尊敬されないと同僚に言われ、イタリア語の勉強をしなかったそうです。しかし、バチカンでは、ほとんど英語を話す人がおらず、ミサを初め、公用語はラテン語で全く理解できず、やむなくイタリア語を勉強し覚えたそうです。そのおかげで、地元の人とのコミュニケーションが取れるようになって、初めて文化や習慣の面でイタリアを理解することができた、というエピソードを披露されました。
このような経験に基づいて、語学学習の大切さを説かれ、その学習法としてはTVの国際ニュースや語学番組、各国公的機関のウェブサイトなどが非常に役立つことを紹介されました。
講座の後半では、多くのスライドを使って、皇室における要人の迎え方や、海外の高官による接遇の事例などを紹介していただきました。その一つとして、アメリカのゲイツ元国防長官がUAE(アラブ首長国連邦)の皇太子との面談で、椅子で足を組んで靴の裏を見せてしまった事件が紹介されました。靴の裏を見せることはイスラム世界ではタブーであり、その時の写真が問題視され、当時は国際問題に発展したそうです。
プロトコールの視点で海外要人の来訪や日本の皇室、首相の外国訪問時のニュース映像を見ると、プロトコールの原則がどのように現場で適用されているか、また常に原則通りではないこともあることが分かるでしょう。
その他、プロトコールの必須事項としての席次や呼称の問題、国歌やドレスコードの対応の仕方などについても具体的な事例を紹介していただき、あっという間に3時間が過ぎました。
最後の質疑応答の時間では、受講生の皆さまから様々な質問が出され、寺西先生から一つひとつ丁寧にお答えいただきました。今回の講義を聞き、改めて国際交流の場におけるプロトコールの知識がいかに大切か認識された方が多かったのではないでしょうか。