9.252015
『教育再生』 今月のテーマは「マナーが生まれる原点」
当協会の明石伸子理事長が理事を務める一般財団法人日本教育再生機構の広報誌『教育再生』9月号(第88号)が発行されました。明石理事長はこの冊子の中で長らく「めざせ“マナー美人”」を連載していますが、今月のテーマは、「マナーが生まれる原点」。 コミックマーケット会場でのマナーを取り上げました。日本教育再生機構の許可をいただき、記事を転載いたしましたのでご高覧ください。
掲載記事
「マナーが生まれる原点」
少し前になりましたが、テレビのニュース番組を見ていてとても驚いたとともに、感心したことがありました。それは、8月14日から16日までの期間、東京ビッグサイトで行われた『コミケ』、いわゆるコミックマーケットの来場者を取材したものでした。
このイベントは、3日間で来場者が約55万人という国内最大のもので、ニュースではそのイベントの“来場者の心得” が紹介されていました。
コミックマーケットとは、漫画や小説、ゲーム以外にも音楽やアイドルグループのファン、コスプレ衣装や手作りアクセサリーなど、いわゆるポップカルチャーと呼ばれる若者文化の愛好家達が集い、その同人誌などを即売するイベントのようです。
毎年開催されていて、非常に多くの入場者で混雑することから、ニュースでは何人かの参加者の取材を交えて会場での以下のようなルールが紹介されていました。
<コミケ会場でのマナー>
(1)たいへん多くの人が来場するので、当然、会場に入るためには気の遠くなるような長蛇の列ができます。それにも関わらず列はびっくりする整然としていて、しかも移動する列の人達は手を上げながらゆっくり歩くそうです。その理由は、周囲の人にも、列の動きがわかるようにするためだそうです。
(2)同人誌や販売品は1点が非常に安価なので、おつりがないように参加者は各自で数千円分の小銭を事前に準備して参加するそうです。食事や飲み物も持参しておかなければ会場周辺で購入することはできないので、その用意もして参加するそうです。
(3)早く入場したいからといって前日の夜から会場に並ぶことは厳禁のようです。そのようにすると、どんどん前倒しになって徹夜組が増えるからだそうです。
コミケに殺到する人は、いわゆる“オタク”と呼ばれている人が多いように思います。そうした人達はどちらかというと社会性に乏しく、やや自己中心的な人が多いのかと思っていました。しかし、テレビクルーに取材をされた人達は嬉々として「入場者はきちんとマナーを守らなくてはいけない」というような発言をしていて、そのルールを守ることを誇らしげに語っていたので、私は驚いたのです。
しかしよく考えてみると、その社会の秩序を守ろうとする意識から“共通のルール”を作ることが、まさに「マナー」なのです。
その前提となっているのは、その社会を大切に思っているからではないでしょうか。秩序を乱す人を戒め、その社会が混乱することのないように、互いに節度を守り、その社会に共存する他の人に配慮することこそが「マナーの原点」です。そのような思いや知恵は、どのような社会であっても、どのような人達であって同じなのだということに、改めて気づかされた出来事でした。