【ブリリアントクラブ】枡野俊明先生の講話会を行いました

2015年6月27日(土) 2015年度最初のブリリアントクラブのイベントとして横浜にある曹洞宗建功寺にお邪魔し、ご住職の枡野俊明先生のお話を伺いました。
梅雨どきの開催で天気が心配されましたが、幸い午前中に雨もやんで、お寺ならではのしっとりとした空気に包まれながら講話会を行うことができました。
建功寺

足るを知る

ご承知の方も多いかと思いますが、枡野先生は建功寺ご住職としての活動に加え、世界的な庭園デザイナーとしてもご活躍です。大富豪と呼ばれる方が世界中から枡野先生に日本庭園の設計を依頼してこられるそうですが、そうした方々のリクエストに共通するのが「何もない空間を作ってほしい」ということだそうです。コレクションの限りを尽くした方々が辿り着く境地が「無」であるということは、モノを持つことが幸せや満足には必ずしもつながらないとうことを意味しているのでしょう。これはモノに「執着しない」という禅の精神をよく表しているのではないでしょうか。

お釈迦様も涅槃に入る前に「足るを知る」、すなわち「知足」が心豊かに生きていくためには最も大事であると説かれたそうです。もし、便利さや速さが豊かさと同質であるとすれば、現在に生きる我々は200年前の人たちの数百倍幸福になっているはずですが、実際のところ我が国でも毎年約3万人の人が自ら命を絶っている現状があり、こうしたことからも、モノがあふれている現代にあって心豊かに生きていくためには、(モノを)求め続けるのではなく自分なりの”満足の基準”を持つことが重要であると言えるでしょう。
建功寺

仏教の根幹

枡野先生は、仏教の根幹として、2つの言葉を教えてくださいました。
一つが、「諸行無常」。つまり、諸々のものは移ろいゆく、その移ろいを受け入れられなければ悩みや苦しみになるということです。日本には四季があり、季節の移ろいを肌で感じることができるので、無常という感覚は特に日本人である我々には理解しやすいのではないでしょうか。

もう一つが「諸法無我」。これは自分の存在は単独ではありえない。全てのものは関係性の中にこそ存在していることを意味しています。それを端的に表している言葉が「おかげさま」です。この言葉は、もともとご先祖様のお陰で自分が存在しているということを意味していますが、人は誰しも一人では生きていけない、様々な人に支えられているということを見事に表している言葉だといえましょう。

仏教では、全ての人間は一点の曇りもない心を持って生まれてくる(仏性、真如)とされますが、成長とともに執着心や他人との比較によって純粋な心を失っていき、簡単には満足できない生活を送るようになっていきます。では、生まれたときの純真無垢な心までは取り戻せないにしても、どのようにして心を清く保っていくか。それが二千年以上にわたって人々が仏教にもとめてきた大きな課題ではないでしょうか。
西洋では、よく仏教は哲学的だと言われますが、仏教では理論として言葉で説明するのではなく「行」によって体得することを目指します。これが「悟り」であり、仏教で修行をする目的というわけです。

建功寺

禅と私たち

豊かな人生を送るために、僧侶でない一般人が生活にどのように「禅」を取り入れるかという質問を受けることがあります。僧侶のように厳しい修行をする必要はありませんが、「三業(さんごう)」を整えることを心がけると良いでしょう。三業とは、つまり「身業」=立ち居振る舞い、「口業」=言葉、「意業」=心で感じたり、考えたりすること、のできそれが3つの行動のことを言います。この3つを律することによって生活にタガを締めることが、モノへの執着や他者との比較から離れた精神性を育むことに、つながっていくのです。

「禅」はもともと中国から入ってきたものですが、現在、中国には古来の「禅」は残っておらず、文化大革命後に韓国や日本から逆輸入している状況です。「禅」は、日本と親和性が高く、「芸」が禅と結びついて、日本においては生き方を極める「道」にまで昇華し、茶道や華道、剣道などが生まれました。これが、現代では日本の精神性の象徴「ZEN」として世界中に発信されているわけです。

枡野先生が最後に教えてくださった言葉が「和顔愛語」です。笑みをもって人と接することで相手から攻撃されることもなくなります。ストレスの多い現代においては、不愉快なこと、自分には理解できないこともたくさんあります。そんなときでも、他人の反応とは関係なく、一人ひとりが微笑んで人と接することを実践していくことで社会がよい方向に動いていくのではないでしょうか。

建功寺

最後に

今回の講話会では、参加者の方に枡野先生のご著書をプレゼントいたしました。事前に建功寺へ書籍をお送りして先生のサインをお願いしていたのですが、当日参加者の方から驚きの声があがっていました。
そのわけは…枡野先生がサインとともにお書きくださった禅語が一人ずつ違うものだったのです。さらに、講話会終了後は、その禅語の意味を質問に来るお一人おひとりに、丁寧な解説をしてくださいました。枡野先生のお気遣いに参加者の皆さまは大きな感銘を受けていらっしゃいました。

建功寺

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